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ENSについて調べてみた

ENS(Ethereum Name Service)の概要や技術的な面については分かりやすい紹介記事が過去にいくつも書かれているので、ここではかなりの頻度でOpenSeaの取引ボリュームランキングに入り続けている背景(と思われる)や、今後の可能性などの紹介をまとめてみようと思います。なので「ENSってなに?」という部分については紹介するいくつかの記事をぜひ

サマリ

プロジェクトのスタート2017/5
ドメイン発行数274万(2022/10時点)
holder数55万(2022/10時点)
ENSを知るための記事たち

登録数などの数値はこちらのDUNEのダッシュボードから引用しています

ENSの仕組み

紹介した記事で説明されているENSの仕組みを、ものすごく簡単かつ雑に説明すると「所有するEthreumウォレットのアドレスをvitalik.ethのようなドメインに置き換えることが出来るサービス」です。

ではこのサービスがなぜ2022/5以降毎月平均して30万件以上登録され、OpenSeaでここ数ヶ月にわたって毎日1000件以上の取引が成立するほど多くの人の関心を集めているのでしょうか。正解は分からないですがその可能性と思われることをまとめてみようと思います。

アドレスの分かりやすさ

一番の基本として言われることですが0xXXXXから始まるイーサリアムのアドレスをXXX.ethで置き換えられることで覚えやすくなる、アドレスを間違えにくくなるなどのメリットがあります。またENSのドメインにはETH以外にもBTCなども紐づけることが出来ます

画像が読み込まれない場合はページを更新してみてください。
サブドメインを作ることができる

自分の持っているENSにサブドメインを作ることが出来ます。団体や企業でドメインを持っていれば「market.○○○.eth」「event.○○○.eth」などそれぞれ細かく分けたドメインを作成できます。またそれぞれのサブドメインごとにNFTを発行が可能です(2022/10時点ではコードを書いてデプロイが必要でWEBから誰でもできるようになるツールは開発中)

ENSでサインインができるようになる(開発中)

Sign in with Ethereumという名前で開発中のサービスを通じて、ENSを利用してWEB3だけでなくWEB2のサービス間でもアカウントやパスワードを管理しなくてウォレットを通じたログインを広げていく取り組みが進んでいるそうです

複製できないアイデンティティ

ENSの名前は全てユニークであり重複することがないので、個人やサービスや企業としてのブランディングのために使うことが出来かつなりすましを防ぎやすくなります。アイデンティティの証明としてより多くのサービスで導入されればSNS上のなりすまし防止などにも使える可能性があるのでは、と考えています。

また、個人のアイデンティティでありそこに記録されるTXが活動の証明でもあるのでENSを通じてWEB3のその人の姿がわかるようになっていくかもしれないですね。

1つの例として現在テストネット上でローンチされているPhiはENSドメインとそのドメインに紐づくアクティビティからメタバースを構築するサービスの提供が予定されています。

以下Phiの紹介記事から「なぜENSを使うのか」に関する引用です

なぜENSなのか?なぜなら、ENSは人々のオンチェーンのアイデンティティに関連する最も分散化された共通の資産だからです。 私たちは他のメタバースのNFTプロジェクトのように、高価なNFTを購入した人だけが遊べるような排他的なものにはしたくないのです。Web3におけるメタバースは、より分散化され誰に対しても開かれたものであるべきだと考えています。これが土地を生み出すためにENSを使用する理由です。
ENSが活発に取引される背景(と思われること)

ENSの盛り上がりと共に当初は.comと同じように広く一般的な名称や企業(実際にバドワイザーがbeer.ethを購入するなど)や有名人の名前など、後に買い取られることを期待した動きがありました。

その後999club(フロア31ETH)や10K club(フロア2ETH)といった「一定の条件に当てはまる希少性のある数値」を持つドメインをカテゴライズする動きが2022年前半ごろから活発になっていて、それらの中心にENS.visionというENS専用のマーケットも備えたサイトがあると考えられます。

ドメイン名値段日付
beer.eth30ETH2021/8
sex.eth41ETH2019/11
gucci.eth12ETH2022/3
opensea.eth99ETH2022/8
073.eth47ETH2022/9
000.eth300ETH2022/7

先行した10K clubなどの動きを参考にして数多くのコミュニティが生まれています。ここからの動きとしてはアラビア語やヒンドゥー語、漢数字などの英語圏以外の数字を使用した3桁数字のグループなどが生まれていてアラビア語の3桁ドメインはフロアが2ETHを超えています。

このような動きは、ENSの持つ「アドレスのわかりやすさ」という側面はあるものの「希少なものには価値がある(はず)」というロジックをどこまで信じるかというチキンレースになっている側面もありそうで、ENSというプラットフォームを使った1000〜10000規模の個別のプロジェクトとなっている印象もあります。 ただ、これらの動きによって2022年というETHにもNFTにも厳しい時期にも関わらずENSは一定のボリュームを保ちカテゴライズされた一部のENSのフロアは大きく上昇したことでさらに人が呼び込まれているというところもありそうです。

運営チーム(ENS DAO)

ENSは2017年初頭にイーサリアム財団からスタートして2018年に別組織としてスピンオフしたチームが開発し、現在は$ENSの発行後の運営をENS DAOが行っています。 DAO設立時に5つの条項からなる「ENS DAO Constitution(憲法)」に関する投票が行われその結果、以下の5項目がENS DAO Constitutionとして存在しています

  • ENSのユーザーが持つ権利はガバナンスによって侵害されない
  • 登録料はインセンティブ構造のために設定される
  • 収益はENSや他の公共財のために使われる
  • ENSはグローバルな名前空間(DNS)を統合する
  • この憲法は多数決によって改正される

ちなみにガバナンスで決定したり議論されているかは分からないですがENSは二次流通のロイヤリティは0%なのでドメインの登録および更新の際の利用料が収益源のようです。

DAO(それ以外のことも含めて)に関してはENSの開発者の井上真さんのインタビュー記事がめっちゃ参考になるので詳しくはそちらを

ポジティブ/ネガティブ
  • ポジティブ
    • アドレスを扱うにあたって分かりやすく便利である
    • イーサがより広く受け入れられるにつれてENSもさらに利用される相乗効果が期待できる
    • ウォレットやアドレスがWEB3での個人のアイデンティティとなる時には必ず採用される
    • トークンである$ENSもNFTであるENSもETHの動きとの相関が強くなく相場の動きに左右されにくい
  • ネガティブ
    • ドメインは無限に作成可能なので価値は希薄化し続ける
    • 「希少性」を軸にした価格高騰がいつまで持続するか
    • 同様のドメインネームサービスの乱立
まとめ

ENS自体がイーサリアムのユースケースの一つとして象徴的なものであり、この先イーサリアムがより広く利用シーンが広がっていけばENSが利用されるケースもさらに広がっていく可能性がありそうだと思います。その時に希少性や投機的な側面からの値上がりがどこまで起こり続けるかは全く分かりませんが、全てのENSは本質的には1/1なので多くの人にとって分かりやすいものや、アイデンティティとして使いたい、と思えるものは価格がどうなっているかは分かりませんが一定の需要はあるのかなと思います。

※免責事項:この記事の内容はいかなる種類の投資判断を推奨・助言するものではありません。

書いた人は自分で持っていたいものと宝くじ的に欲しい人が出てきたら面白そう、と思うものを更新の時に負担と感じない範囲でいくつか持っていても面白いかなと思って自分は5桁数字と絵文字をいくつか持ってます。